1987年12月 画面に『志國三』とタイトルが表示された。--初めて光栄の『三國志』をプレイした時のこと。
1987年12月某日 11歳(小学5年)
今日は終業式で学校が昼までだったんで、昼から友達と家で遊んだ。
一緒に遊んだのは、ハル、セオ、オノヅキ、ミドリ、ダンの5人。
昨日、買ってもらったMSX2の『三國志』。
まだ開けてなかったので、みんなが集まってらから開けた。
中にはカセットと本が2冊(1冊は説明書でもう1冊は武将の紹介)とカセットテープが入ってた。
早速、ゲームを始めてみた。
画面に『志國三』とタイトルが表示された。
ダンが「なんで反対に書いてあんの?」言った。
僕も知らない。
次にシナリオを選ぶ画面。
人数が僕をいれて6人だったから、シナリオ3「新時代の幕開け」にした。
7人の顔と名前が出てきて、よくわからなかったけど、僕は袁紹という人にした。
カリスマが100だった。
中国の地図がでてきて、順番に何をするかを選んでいく。
「これ音楽ないの?」とオノヅキが言った。
「あ、そのテープかけるんとちゃう?」とハルが言ったので、テープをかけてみたけど何も鳴らなかった。
このカセットテープは何だろう?
このゲームは、自分の順番が来たら、「がいこう」とか「ぶしょうそうさく」とか「ほどこし」とかをやる。
画面にはたまに絵も出るけど、だいたい字ばかりで、「うまのかず」とか「たみのちゅうせいど」とかいろんな数字が書いてある。
あんまりよく分からないので、適当にやっていたら、
ハルが「ぶしょうそうさく」したら諸葛亮が出てきた。
でも、仲間には入ってなかった。どうすれば仲間にできるのかがわからない。
武将はいろいろいて、陸遜がかっこいい。
あと高覧はハゲていた。
「がいこう」でセオがミドリのところに同盟を申し込んだ時、キーボードを操作していた僕が、面白そうだったので使者を殺したら、セオがちょっと怒ってしまった。
その後、洪水が起きてしまったので、今日はそこまでで止めにした。
その後、みんなで「タイムジャンプ戦国武将大決戦」で遊んだのが楽しかった。
※本記事は当時の記憶を頼りにフィクションを交えて執筆しています。
◆現在◆
最後に出てきた「タイムジャンプ戦国武将大決戦」というのはトミーから出ていたボードゲームです。簡単に言うと、コマが戦国武将(信長とか家康)になっている自動判定機付きの軍人将棋です。
さて、ということで今回は光栄の『三國志』を初めてプレイした時の話です。
令和元年現在の日本には、『三国志』を題材にしたコンテンツが溢れてて、まったく歴史などに興味を持っていない小学生でも、孔明とか劉備とか曹操の名前ぐらいは知ってたりします。
昭和末期の小学生はどうだったかと言えば、『三国志』なんて誰も知りませんでした。かろうじて当時の小学生に届いている可能性があったのはNHKの人形劇くらいでしょう。その当時はまだ横山光輝『三国志』も完結していませんでした。
そんな時代に、僕がなぜ光栄の『三國志』を買ったのか?
その頃の僕も『三国志』について特に知ってるというわけでは有りませんでしたが、光栄の『三國志』をやりたかった理由は二つ有りました。
一つは当時、テレビ東京系で放送していた『パソコンサンデー』というパソコンに関する情報番組が有りました。司会は小倉智昭です。その頃、ファミコン全盛期でしたが、僕はパソコンのゲームへの憧れがあって、まだMSXも持ってない頃から、毎週観てました。
そこで紹介されていた『三國志』の画面に一発でやられたんです。
PC-9801あたりの画面を観たんだと思いますが、「よく分からないけど細かいデータが並んでるのがカッコイイ!」と僕は思ったんです。何というか、「大人が遊ぶゲームだ!」というインパクトでした。
もう一つは「ファミコン通信」の連載漫画『大トロ倶楽部』(片山まさゆき・作)の『三國志』の回が面白かったから。『大トロ倶楽部』は大好きで毎週読んでたんですが、基本的にファミコンのゲームを扱っている中で、パソコンゲームの『三國志』をテーマにした回があったんです。
この回が凄く面白くて、「この『三國志』ってゲームはメチャメチャ面白いに違いない!」と確信したんです。『大トロ倶楽部』は今、「マンガ図書館Z」で無料で読めるので、是非。読んでみてください。
と、そんな理由により僕は『三國志』が欲しくて仕方なくなりました。
でも、このソフトは14,800円という信じられないほど高価でした。子供心にこの値段のものは簡単には買ってもらえないと思ったもんです。
そこで一計を案じます。
まず、「お年玉とクリスマスを合算作戦」。
クリスマスプレゼントを買う時に、正月にもらうであろうお年玉も合わせて良いと、親に交渉しました。
そして、「このゲームは勉強になる作戦」。
6年生からは歴史の授業も始まるので、このゲームは遊ぶだけじゃなくて勉強にもなる!と親にプレゼンしました。その時はでまかせでしたけど、結果的にはあながち嘘ってこともなかったです。
激しい交渉の結果、僕は親に『三國志』を買ってもらうことに成功しました。
ただ、近所の店では取り扱っていないソフトだったので、父に頼んで少し遠方のパソコンを扱っている電気店で購入してきてもらいました。
実は僕はここで一つミスをしてしまいます。
当時、僕が持っていたハードは「Panasonic A1」という機種でした。これは規格でいうと「MSX2」(16bit)なんですが、父が買ってきたのは、MSX(8bit)用の『三國志』だったのです!
ただ、MSX版のソフトはMSX2でも互換性があって普通に遊べるので、結構、後になるまで僕はそれがMSX版だということに気付いてませんでした。父に詳しく説明してなかったことも含めて、間抜けな話です。
で、紆余曲折を経て遊んでみたものの、最初はなんだか分からないというのが、正直な感想でした。
『三国志』のことを、その日、集まったメンバーの誰もが、ほとんど知らない状態でしたし、コマンドの意味も分からない。マニュアルもろくに読んでないですから当たり前です。そもそも小学生の僕たちには「じんざいとうよう(=人材登用)」という言葉の意味すら分かってなかったですから。
だから面白いわけがないんです。しかもMSX版はタイトル画面以外はBGMもなくて、たまに効果音が鳴るくらいでとにかく地味です。小学生が初見で面白さを理解できるほど、とっつきやすい代物ではなかったです。Youtubeで動画を見つけたので貼っておきました。
そりゃあ、『タイムジャンプ戦国武将大決戦』の方が面白いと思いますよ。
帰り際にその日集まった友達が「『三國志』もけっこう面白かったで」と、僕に気をつかった雰囲気で言ってたのが印象深いです。
それでも、14,800円も突っ込んでるわけです。簡単には引き下がれないです。
なので、僕はマニュアルを読み込み、トライ・アンド・エラーを連日、繰り返していきました。もちろん、友達を半ば無理やり巻き込みながらです。
ちなみに上の日記に出てくる同梱されていたカセットテープは、たぶんデータレコーダで使用する為のものだったんだと思います。なので中身は空です。でも、僕はデータレコーダは持ってませんでしたので、このMSX版『三國志』はデータを保存する方法がありませんでした。要は毎回、3年くらい進めて終了、次はまた最初から。というのを繰り返していました。
最初のうちは「『三國志』やろう!」と誘うと、珍しさもあって毎回5〜6人は集まってくれてたんですが、2週間くらいすると2〜3人集まれば上出来という感じになりました。毎回、同じことを繰り返してるようなもんですから、それも当然です。
でも、そんな日々を1ヶ月くらい続けていると、なんとなくこのゲームの面白さを理解できるようになってきました。そうすると、その原作になっている物語にも興味がわいてきて、横山光輝の『三国志』を皮切りに、僕を含めて、クラスの中のほんの数人ですが、超局地的な三国志ブームがやってくることになるのですが、長くなってきたので、それはまた次の機会に。