1990年9月 それは民主主義の原理に反します!--『銀河英雄伝説』と出会った頃のこと。
1990年9月某日 14歳(中学2年)
今日は帰りのホームルームで、合唱コンクールの自由曲を決めた。
課題曲は「大地讃頌」に決まってる。
先生から宿題で唄いたい曲を選んでくるよう言われていたけど、
僕を含めてほとんどの男子は何も考えて来ていなくて、
曲を選んできたのは女子が数人。
候補で挙がったのは「ともしびを高くかかげて」「流浪の民」「天駆ける天馬」。
その中から、先生が「去年、担任したクラスで優勝した曲」ということで「ともしびを高くかかげて」を推薦した。
クラスのほとんどはやる気がなかったので、男子の一部が「それでええやん」と言った。
僕は別にどれでも良かったし、早く帰りたかったので、それで良いと思っていた。
先生も「じゃあ、自由曲は先生が決めさせてもらうぞ」と言って、話をまとめようとした時、
「ちょっと待って下さい! それは民主主義の原理に反します!」
突然、アマハラさんが立ち上がって、大きな声で言った。
普段のアマハラさんはどっちかというとおとなしめの女子だったので、みんなびっくりしてた。
そこから、アマハラさんの民主主義についての大演説が始まる。
僕は聴いてるうちに、『銀河英雄伝説』でヤンとかが言ってた台詞がかなり入ってることに気付いた。
丁度、僕も8巻まで読んでるところだったので、わりとすぐに気付いた。
アマハラさんはどんどんヒートアップして、半泣きになりながら「民主主義」について喋り続けた。
先生もクラスのみんなも、何が起こってるかよく分からない感じで、圧倒されてた感じ。
その後、アマハラさんの演説は10分近く同じ話を何度も繰り返しながら続いた。
最終的にクラスで多数決を取ることが決まり、多数決の結果は「ともしびを高くかかげて」に決まった。
結局、先生の推薦した曲になったけど、アマハラさんは特に文句は言わなかった。
それから、僕は帰って『銀河英雄伝説』の続きを読んだ。
面白かった。
※本記事は当時の記憶を頼りにフィクションを交えて日記風に執筆しています。
アマハラさんの演説の詳細は覚えてないんですが、
ともかく彼女の思想に『銀英伝』が大きな影響を与えてることはよく分かりました。
もしかすると、今頃は地方議員にでもなってるかも知れません。
さて、今回は『銀河英雄伝説』(以下、『銀英伝』)の話と出会った頃の話です。
『銀英伝』は言わずと知れた、田中芳樹の長編スペースオペラ小説。
大ベストセラー(と言うか、ロングセラー)で、現在も新作アニメのテレビで放送中です。
確か数年前に中国で実写映画化されることも発表されたと思います(この話、どうなったんでしょ?)。
僕が『銀英伝』と出会ったのは、たしか中学2年生の夏休み。
たまたま深夜のテレビでやってたアニメを観たことがきっかけでした。
その時観たのは旧シリーズの15話「アムリッツァ星域会戦」でした。
艦橋のデスクの上に胡座をかいて艦隊を指揮するヤン・ウェンリーのキャラクターにやられて、
そこからレンタルで全部観ました。
当時は第1シリーズまでしかまだ出てなかったです。
原作小説もすぐに読みました。
でも、小遣いも少なかったので学校の図書室で借りて読みました。
そう言えば、最終巻を借りたまま返却期限をだいぶ過ぎたのに返さなかった僕は、
当時、図書委員だったアマハラさんに注意されたことが有りました。
思えば、彼女と『銀英伝』に関する会話をしたのは、それだけでした。
アマハラさんほどではないにせよ、
僕も『銀英伝』から受けた影響はそれなりに大きかったと思います。
思想的というよりは嗜好的に。
『銀英伝』が最高に面白かったので、僕は似たような作品を探していきます。
まず、同ジャンルの作品ということで同じ作者の『タイタニア』、
あるいは吉岡平の『無責任館長タイラー』とか。
同じ作者ということで、『マヴァール年代記』『アルスラーン戦記』あたりも読んで、
栗本薫の『グイン・サーガ』も読みました。
あとは『風よ万里を翔けよ』を読んで、『三国志』や『水滸伝』なんかも改めて読み直したり。
それから『銀英伝』きっかけでドイツ風の固有名詞を追いかけるうちに、
なんとなくワグナーのオペラとかも観たりもしました。
今にして思えば。、あの頃、『銀英伝』にハマったことが、
いろいろな作品に出会うきっかけになりました。
という事で、今更、僕が言うまでもないんですが、『銀英伝』は面白いです。
これまで触れてこなかった人なら、やっぱり原作小説がオススメです。
あとはアニメの旧シリーズは長いですが、見応えあります。
ちょうどテレビでも放送してるので、新シリーズのアニメ版が入りやすいかも知れません。
ヤングジャンプで連載中の藤崎竜のコミック版はアレンジがかなり入ってて、好みが別れるところですが、僕はアリだと思ってます。
という事で、今回はこのあたりで。
「銀河の歴史がまた1ページ」